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キッチン

主婦。住み慣れた逗子を離れ、家族で沖縄に移住。めずらしい島の食材で料理をたのしむ毎日。ツイッターのアカウントはkiconemotoです。主な著書「こどもと食べるごはん」文化出版局、「もののかたち+たべるかたち」ソニーマガジンズ
もうひとつの選択

先日、沖縄中部の宜野湾にあるサドベリースクールの見学に行ってきた。
本家は、1968年にボストンで開校され今も続く、どこまでも自由な校風の学校。サドベリーの理念にとことん惚れ込んだ沖縄在住の子どもを持つ親達が、「自分たちで学校を作ってみよう」と、始めたのはかれこれ2年前。
既存のシステムとは、全く異なる性質を持つ学校。
お話しを伺っているうちに、今まで抱いていた教育についての概念ががらがらと音を立て崩れて行くのがわかる。
それも、とてもここちいい崩壊。
たとえばここは、授業や時間割、テストや宿題がない。
スタッフ(大人)の方から何かを教える、ということがまったくない。登校した子ども達は、各自思い思いのまま、自分がやりたいことだけをして、その日いちにちを過ごす。絵を描きたかったら何時間でも描いていていいし、本が読みたかったら多いに読んでOK。ゲームも外遊びも料理もしたいだけしてもいい。
いちばん驚いたのは食事について。
ランチタイムにしばられず、本能のおもむくまま、お腹が空いたら勝手に食べていいし、空かなかったら食べなくていい。さほどお腹が空いていないのに食べる、という矛盾は、食べものへの興味を損ないかねない。今日、先進国において、毎日の食品廃棄量は深刻な問題だ。
それに何かに没頭しているときは寝食を忘れるもの。その集中力を重視し、断ち切ることはしない。学校のルールやスタッフの給料すら、生徒全員が話し合って決める。
子ども自身が感じて考えること。作業のペースも、方法も、場所も。スタッフはそれをじっと見守ることに徹底している。
ボストン校の17才の女の子は、「家を作ってみたい」と、学校に申し入れをした。学校を通して町の大工さんと交渉し、家の作り方を学ぶことに。材木の調達も、オリジナルトッピングをのせたアイスクリームを学校で売ってそれを資金にした。
「学校側に資金を援助して欲しいと思いませんか?」との問いに、「どうして? 社会に出たら自分でお金をかせぐでしょう?」と言い切る。彼女は将来、とりあえず家と畑さえあれば食べるに足りない、と考えた。そのためには家を作れるようになることが、まずは大事なスキルなのだ。その発想に驚いた。
思えば、学校という空間は、社会から切り離されている。
にも関わらず、卒業したら突然社会人として自分の暮らしの生計を立てなければならない。難解な数学の方程式とにらめっこしながら「これは果たして将来の役に立つのだろうか?」と思ったこともたくさんある。合理性とコストを重視した従来の教育の在り方に、今さらながら疑問を抱いた。
今回の原発事故で、国が、マスメディアが、これほどまでに反民主主義だと思わなかった。究極の事態で露見された、わたしたちの住む日本という国の体質。それに気がつかず、のほほんと気楽にたのしく生きて来た今までと、これからは違う。今一度、既存のシステムを見つめ直してみよう。
けっして義務教育が嫌で嫌で仕方なかった、というわけではない。
それなりにたのしかったし、思い出もある。
ただ、選択の幅が広がった、という点でこのタイミングでサドベリーに出合ったことに感謝している。
親として、どこまで子どもを信用出来るか。
日々、子どもと向き合うなかで、自分なりに模索しつつ。
「自由と放任の違い」、当面のテーマだ。
パイナップル

わたしの住む地域は、パイナップルが名産だ。
梅雨が開けて、ハウス栽培から露地物が出始めた。
ちいさいサイズは150円から買える。
種類はピーチパインというものと、スナックパインというものが主流らしく、わたしはスナックパイン、ボゴールが好み。
果実がかんたんに手でちぎれて、ほんとうにスナック感覚で食べられる。もちろん止まらない……。
この間は近所の方から6個いただいた。
半分はカットして凍らせて、残りはチャツネにした。
にんにくとしょうがとスパイスとオイル、塩で漬け込んでみた。
甘くて辛いパンチの効いた味。
これはもちろんカレーの付け合わせにぴったり。
沖縄はすでに真夏。
気温の上昇に合わせて、カレーの頻度が高くなるのは我が家だけではないはず。
若い夫婦
我が家の同居人、20代の夫婦とその赤ちゃん。
彼らは先月、鎌倉からやってきた。
だんなさんの方がうちの子たちの保育園の先生で、
それも息子の担任だった。
通っていた葉山の保育園は、それはそれは素晴らしく、
1才から6才までの園児がまるで大家族のようににぎにぎしく遊んでいる。
晴れていたら海へ、そして野山へ。
とにかく自然の中をたっぷり歩くことを大切にしている園だ。
食事もオーガニック野菜中心の粗食。
米は毎日精米機でひき、味噌も手作り。
3時のおやつのおせんべも、炊いた玄米をついて油で揚げるという手間のかけよう。
食べられるものを収穫してはおやつにする。
桑の実、むかご、どんぐり…。
ひとつのよどみもなく、凛とした保育園だった。
わたしがなるべく薬にたよらない選択をしているのをよく理解してくれていて、園長先生は豊富な知識からたくさんのアドバイスをくれた。
少人数制なのも、もしも園児の親御さんに何かあったらそのときは園長先生が子どもの面倒を見るという覚悟、徹底した責任感によるものだった。
そのためには子どもひとりひとりを十分に理解しなければならない。だから、あまり大人数だと把握できない。
そういった理念の園だった。
担任のTくんは、体力有り余るやんちゃで真面目な青年だ。
そんな彼に去年赤ちゃんが生まれた。
同じ歳の奥さんと、健気に子育てに向かう姿はほほえましかった。
よく店(COYA)にも顔を出してくれて、例えばいくつかの共通点、(矢野顕子さんが好きとか)があることも知った。
そんなファミリーと今、一緒に住んでいる。
去年、やっと理想の定職、「学びの多い保育園の保育士」という職業についたばかりだったTくん。質素な暮らしぶりだからきっと貯金もなかろうに、それに沖縄の失業率は全国でも1、2を争う。
そんなことを老婆心ながら心配しつつ、
これから始まる彼らの沖縄生活を思った。
そして、それは単なる杞憂に過ぎないことを日々、実感している。
彼は、すごく元気だ。
早朝から、花摘みのパートを見つけた奥さん(花摘みの仕事は女性限定なのだそう)のために愛夫弁当をこしらえたり、沢で洗濯をしたり、薪を集めたり…。
赤ちゃんを背中におぶって、額に汗してくるくると家仕事をやっている。うちの子どもたち相手に、さながらミニ保育園。
沢で魚や手長海老をとり、お弁当を食べて、近所を散歩して。
赤ちゃんも最初はお母さんと離れるのがいやで、さんざん泣いていたけれど、今はすっかり慣れたよう。
しっかりと前を向いて、いちにちいちにちをきちんと暮らしながら、人との出会いをていねにつなげて、積極的に開拓している。
そんな印象を受けた。

結局、わたしたちの肌かゆ病は、蚊やダニに刺されたのが原因で、もともと持っていたアレルゲンが過剰反応した皮膚疾患だった。
かなり弱っていたアラフォー夫婦にとって、彼の存在はあまりにも眩しい。
でも同時に元気をもらった。
そういった、グッドタイミングでの同居に感謝している。
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