2010.03.01
新月のお祝い
2月14日は旧暦のお正月。しかもバレンタインデーで新月という、なんともおめでたい一日でした。旧正月が毎年必ず新月の日に当るということさえ知らなかった無知な日本人の私ですが、今年はこのめでたい日にふさわしい過ごし方ができました。母の友人であり、能楽囃子大倉流大鼓・大倉正之助さんと『旧暦の新年を迎える越年式』に参加してきたのです。

愛知県の豊橋からJR飯田線に乗り換え、約一時間で『湯谷温泉』に到着。澄み切った宇連川の流れに沿って数件の宿が建ち並ぶ、隠れ家的な温泉地です。奈良時代に開泉したと伝えられるその温泉は、古くから万病に効く霊泉と言われてた由緒ある古湯です。今回の会場はその湯谷温泉にある観光ホテル、「泉山閣」。こちらの女将さんとご主人もまた母の古くからの友人で、これまでにも何回かお世話になっているのですが、久しぶりに来ると「やっぱりいいところだなあ〜」と再感激。
夕方にはホテル内の会場に集まり、大蔵さんとお弟子さんの方達から鼓の打ち方を習いました。もちろん、私にとっても初めての体験。桜の木の筒に馬の皮を貼っただけの大鼓は、シンプルなだけに非常に奥の深い楽器です。教えられた通りに打ってみても、間の抜けた音しかでない上、とにかく手が痛い〜。あっという間に手の平が真っ赤になってしまいました。
現在ではほとんどの大鼓奏者がプロテクターのようなものを指に付けて打つのだそうですが、大蔵さんは伝統的な奏法である素手打ちにこだわっています。
「手が痛い時には鼓も痛がっているんですよ。力を抜いて」と大倉さんの教え子である可愛いらしい少女に諭されて、再チャレンジ。拍手をするように、やさし〜く叩いてみると、あ〜ら不思議。力を込めて叩いた時よりもずっと良い音が出るのです。精神状態がこれだけダイレクトに音に出てしまう楽器って珍しいだろうなあ。

翌朝は5時起きで、温泉に入って禊(?)をし、バスで数分のところにある鳳来寺に向かいました。そそり立つ岩壁に囲まれた、その素晴らしい景色に、寒さもしばし忘れます。

ゆっくり昇り始めた太陽の光を浴びながら、大蔵さん一行の演奏が始まりました。「いよ〜」というかけ声のあとに、「カーン」という鼓の音が静かな境内に鳴り響き、岩壁に反射して広がっていきます。傍らでは、画家の城戸わこさんが、白い打掛けにダイナミックに絵を描いていきます。その非現実的な光景に、それでもどこか懐かしいものを感じるのは、それが遠い昔から続けられてきた、原始的な人々の祈りの姿だからだと思うのです。
鼓の音と一緒に、身も心も洗われた、新しい年の始まりでした。来年も行きたい〜。










































