今回ソルトスプリングにやってきたのにはもう一つ理由があります。
この島にはソルトスプリング・センター・オブ・ヨガと呼ばれる有名なヨガセンターがあるのですが、そこに、そのグルであるババ・ハリ・ダスがやってくると聞いたからなのです。日曜日に行われるイベントは一般にも公開されるというので、私も参加させてもらうことにしました。
1981年に設立されたこのヨガセンターは森と緑のフィールドに囲まれた素晴らしいロケーションにあり、日本をはじめ世界中からヨガを勉強するために人々が集まり、寝食を共にしています。
私も一度ここの集中コースに参加してみたいと思っていたのですが、二週間泊まり込みで朝の5時から夜まで続くトレーニング・スケジュールは、子持ちの私にはかなり厳しい?。
残念ながら今年はあきらめることにしました。でも体力的についていけるうちに受けたいしなあ。う?ん。本当にね、若くて自由なうちにやりたいことは何でもやっておかないとね。
ババ・ハリ・ダスは1952年以来一言も言葉を発していないという修行僧でもあり、このセンターを始め、カルフォルニアのマウント・マドンナ・センター、インドのスリ・ラム孤児院などのグル、思想的指導者です。
数カ国語を話し、ヨガ、アーユルヴェーダ、インド哲学などにも造詣が深く、70年代に「Be Here Now」という本をアメリカで出版し、その名は広く知られるようになりました。
数人の歌い手さんのリードに合わせて
歌うキルタン。いいのよね?、これが
ここはどこ?私は誰?白いローブに身を包んだグルがあらわれると、場内には歓声というよりはため息に近い感歎の声があがりました。
グルは当然ながら言葉を発することなく、静かに部屋の前方に設けられた席につきました。その不思議な存在感に前から二列目に座っていた私は引き込まれました。
何十年も話をしていない人の世界って、一体どういうものなんだろう?私とは全く違う次元に存在しているような気がしてきます。
グルを前にサトサングが始まりました。「真実を求める者の集い」を意味するこのサトサングは瞑想をしたり、インドの様々な楽器による生演奏とともにメロディーに乗せてマントラを歌ったり、インドの哲学書バガバッドギータやグルの教えなどを読む会です。
私もいくつかのサトサングに参加したことがありますが、そのピースフルで独特な雰囲気が大好きになりました。音楽に合わせて皆で身体を揺らしながら歌っていると、70年代のヒッピー映画の主人公になったような、いったいここはどこなんだ?という不思議なタイムトリップ気分に陥ります。
本当にね、ここだけ違う時間が流れているみたい。
ボードに答えを書くババ・ハリ・ダス。短い言葉がとても深い最後にグルへの質問タイムがあり、かなり哲学的な難しい質問から、ヨガ修行の上でベジタリアンであることの意義は?といった興味深いものまで、様々な質問が飛び交いました。
グルとの会話は全てボードを使った筆談で行われ、隣に座った女性がその内容を読み上げて行きます。私も思い切って一つ質問をぶつけてみました。
「この美しい島にいると、幸せになるのは簡単なことに思えます。でも、私が普段住んでいるのは大都会です。人はたくさんいるけれど、時にとても孤独な気分になることがあります。そういった場所で自然や人とのコネクションを維持していくにはどうすればよいのでしょう?」
私の質問を頷きながら聞いていたグルは、ボードに答えを書き始めました。隣に座った女性がその答えを読み上げます。
「You live in a big city, but you don’t live within it. あなたは都会に住んでいるが、都会の内に収まっているわけではない。」
う?ん、なるほど?。
シンプルながらも深?いこの答えに場内のあちこちから「Yes」という声が聞こえてきました。
確かにね、都会に住んでいると息が詰まりそうな気がすることがあるけれど、実際には東京だってソルトスプリングだって同じ地球上にあるわけで、空気だって水だって繋がっている。そして、私はいつでも完全に自由な存在で、どこに住んでいたって私であることには変わりはないのよね。
再び始まった歌を聞きながら、そんなことを考えていると、なぜか急に涙が溢れてきました。突然のことに自分でも驚きながら、ふとまわりを見回すと、やはり涙している人が何人かいます。う?ん、なんなんだろう。
庭の木の下でババジを囲む人々。まるで仏陀のようだ日本ではスピリチュアルな道を歩むことに、なにか修行的な重さがつきまといがちですが、カナダで出会ったヨギー達の多くはとても開放的で楽しそうに毎日を送っています。
仏門に入るのならともかく、パーフェクトにはほど遠い現実の世界を生きながら、精神的な充足感を求める上では柔軟性も必要です。
誰も排除することなく、つねに門が開かれているこのセンターの軽やかな空気には学ぶことがたくさんあるような気がします。
ソルトスプリング・センター・オブ・ヨガのピースフルでピュアーな雰囲気に、妙に心を打たれた一日でした。
来年こそはワークショップ、受けたいなあ。