火の神、ペレのひそやかな足跡(2)
火の神、ペレのひそやかな足跡(2)

ひとつだけ、赤い葉が混ざっているこのシダは、ハワイ固有の種でアマウ(ama-u)と呼ばれる。高地に生息し、また他のシダと違い、日の当たる場所を好むそう。このシダにもペレにまつわる伝説がある。カマプアアという半人半豚の神様がペレの恋人であった。人間の姿のときは驚くほどの美青年だという。嫉妬深いペレと浮気性のカマプアアは折に触れて派手な痴話げんかをすると伝えられている。ペレは、火山を噴火させたり、対してカマプアアは大雨を降らせたり……(人間にとっては迷惑この上ない話だが)。その喧嘩の途中、ペレの噴火の炎に追われたカマプアアがシダに変身して難を逃れようとしたが、しっぽに火がついてしまったので、ひとつだけ赤い葉が混じってしまい……。という話。人間くささを感じる神様たちの姿だ。
ちなみに「ハレマウマウ火口」は、ハワイ語で「アマウの家」という意味(hale=家を意味する)。派手に喧嘩をしつつも実は仲良く火口で二人は暮らしている……というのはロマンチックすぎる想像だろうか。

このかわいい赤い実は、オヘロベリーといってハワイの固有種だ。そして火山帯にのみ生息する力強い植物だ。葉は硬く、上から見ると雪の結晶のように整然と並んでいる。甘酸っぱく、タルトやお茶にも使うこの実にもまた、ペレの大好物という伝説がある。彼女の怒りを買わないため、食べる前にペレにひとつ実を捧げないといけないらしい。オヘロベリーを見つけて味見をしたいときは、忘れずに……。
毒がある似た実に注意!
オヘロに似たアキアという赤い実があるが、こちらは猛毒で大変危険。オヘロには小さい種がたくさん入っているがアキアは一つだけなどの違いはあるが素人判断で野生の実を採らないこと。
自然が生んだ、違う顔の植物たち
鳥、虫、植物など、多くの外来種に侵略されてきたハワイ独自の生態系は、高地で溶岩に晒された後の土地では昔のままだ。特にハワイ固有の植物は、可憐で逞しい姿を私たちに見せてくれる。長谷川さんの植物学と歴史学が融合した詳しいガイドは、ひとりでは絶対に体験できないほど、深い。例えばナウパカ、たとえばプキアペ。ひとりだったら見過ごしてしまうだろう可憐な植物たちの植物図鑑より面白い、その身の上話。同じ植物が、溶岩が覆った大地で環境によって姿を変え逞しく生きている姿は、ハワイの人々が愛した自然そのものなのだ。


葉と花のエッジがギザギザな、山のナウパカは、海のものが高地へ移動するに従い独自の進化をとげ、ハワイの固有種になったもの。海沿いに生息するナウパカは、葉と花のエッジが滑らかでかつてその種が海を渡ってきた植物である。花びらが半分しかないのが特徴。


プキアペと呼ばれるハワイ固有の植物。清めの植物とされ、王族が一般の人と触れ合った後にこの木を燃やして煙を浴びた。白の実を付けるのが一般的だが、この2つは一見すると同じ植物と思えないほどだ。もっと色が濃く、赤に近いような個体もある。
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