vol.5 東レ 水の貧しい国に貢献する 汚れた水をきれいにする「高機能膜」

東レ(株)
専任理事 水処理事業本部(技術渉外)・研究本部(水処理)担当
工学博士 国際脱塩協会理事 日本脱塩協会会長
栗原 優さん
私たちは、「水は人間に不可欠なもの」と思う一方で、
「水は日常的に普通にあるもの」と軽く受け止めている傾向があります。
でも、それは日本を含めた一部の国だけの話。
東レはつねに世界に目を向けて、水に対する切実な現状を把握し、
そのためにできる技術革新を進めています。
蛇口をひねると、当たり前に出てくる水。私たちはその水を、お腹いっぱい飲み、浴槽にたっぷり入れて風呂を沸かし、トイレを使ったあとはレバーをひねって流しています。水は、私たちの生活になくてはならないものなのに、あまりに簡単に手に入りすぎて、その重要性を実感できる機会がありません。
「日本は、川や湖が多いうえ、雨季もあるため水源に恵まれている、水の豊かな国といえるでしょう。ですが、いったん世界へ目を向けてみると、水の貧しい国が想像以上に多いことがわかるはずです」
水の豊かな国と貧しい国
60億人のうち11億人はまともな水が手に入らない
シンガポール・チュアスにある、環太平洋地域で最大の海水淡水化プラント。東レRO膜が採用されています。1日あたり136,000 立方メートルもの海水を淡水化する能力を持っています「地球全体の水のうち、私たちの生活に比較的使いやすい河川・湖・沼などの淡水は、わずか0.01%にすぎません。世界の人口60億人のうち、飲料上水をまともに得られていない人は約11億人、下水設備や衛生設備がない地域に住む人は約24億人といわれ、アジア・アフリカ圏が中心。もちろん、日本は当てはまりませんが、ここに該当する、インド、インドネシア、パキスタン、韓国、マレーシア、シンガポールなどが水飢餓状態なのを知っている日本人は、どのくらいいるでしょうか。水の豊かな日本は、水の貧しい国を手助けする必要があるのです、ですから東レでは、日本の企業として水処理技術への開発に力を入れています」
世界トップレベルの「高機能膜」技術で
海水を真水に変える
![]() RO膜・RF膜/イオンなどの溶存物質と高分子量溶存物質成分を除去 |
![]() MF膜/バクテリアやウィルスを除去 |
![]() UF膜 RO膜・RF膜→MF膜→UF膜の順に、孔径が大きくなります。大きさにあわせて除去物質の種類がかわります |
イオン等の水中の溶存物質をすべて除去できるRO膜、高分子量溶存物質成分を除去できるNF膜、微分子・細菌類を完全除去できるUF・MF膜の4種類は、世界トップレベルの性能を持つ膜として、世界中に注目されています。
「私たちの生活を支える水源は、1河川水・湖水・地下水、2海水、3下廃水の大きく3つに分けることができます。水の豊かな日本では、1のみが浄水場できれいな水になって各家庭に届いていますが、水に貧しい国は、2や3まで活用することが必要。
たとえば東レの開発したRO膜を海水に通せば、淡水(真水)になるまで水をきれいにろ過することができます。
平成12年には、海水の塩分濃度が5.5%と高く、微生物も多いことで淡水化が困難といわれていたペルシャ湾の海水淡水化に成功。
そのほか、沖縄、シンガポール、サウジアラビア、スペイン、トリニダード・トバコなどでも実現しています。
最近は、UF・MF膜にRO膜を組み合わせることによって、農業・工業用水などに下廃水を利用する計画も進行中で、クウェート、シンガポールなどでも、東レのRO膜が採用されました。
これによってシンガポールでは、24万トン・100万人分の生活用水が海水や下廃水から作られ、人々の暮らしが支えられているのです」
東レは、このような膜技術の提供だけでなく、膜を効率よく活用するためのプロセス、いわゆる高効率2段法システムも開発し、大河内記念生産賞、日本海水学会技術賞を受賞しました。

しかし東レは、独自の膜技術やプロセス技術で、残りの海水にもう一度巻くを通すことで、さらに20%の淡水を回収することが可能になり、低コストで、より多く(合計60%)の淡水を回収できるようになりました。水に貧しい国々は、豊富な国から水を買ったりしている所もあります。しかしそれには莫大な費用がかかるので、何とか水を自給しようと、こうした技術を積極的に取り入れる努力をしています。持っている技術でそれに応えることが、私たちの使命ではないでしょうか。そのために、4種類の膜に、前処理技術などを適切に組み合わせて下廃水の処理・再利用などが拡大するよう、“どんな汚い水でも可能なかぎりリサイクルして使い、貴重な水をできるだけ無駄にしない”ことをモットーに、さらに技術を磨きたいと考えています」
水の豊かな国に生まれた者として私たちにできることは、水の貧しい国の現状や、水確保に対する努力を理解することです。
今こそ、水のありがたさを知ることが必要な時期にきているのはないでしょうか。
東レ http://www.toray.co.jp/







































