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飛騨・高山のローハスな小旅行 1

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第一章
雪が生んだローハスな
手仕事、「刺し子」
真っ白な雪と飛騨刺し子の鮮やかな彩り。
週末に車を少し走らせて、 その美しいコントラストに出会う。
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しんしんと降りつもる雪。都内から車を走らせて5時間半、そこには、あたり一面美しく雪化粧された景色が広がっていた。
今回の旅の目的地である飛騨高山は、かつて城下町の中心として、また、商人の町として賑わった場所。ここに来れば必ず訪れる上一之町、上二之町、上三之町の3つからなる古い町なみは、町家造りの家屋や出格子(でんごし)と呼ばれる格子窓が整然と並び、日本の伝統的な建築美をそのままに残している。
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そんな高山で、ローハスなスポットとしてまず訪れたのが、古い町なみの一角に佇む「本舗 飛騨さしこ」。雪の時期にこそふさわしい、飛騨刺し子の小物を扱う専門店だ。ちなみに「刺し子」とは、一般的には、布を重ねて針をさしていくもののこと。その昔、まだ布が手に入りにくかった頃、飛騨のような雪国の女性たちは、貴重な布を補強し、布目を糸でふさいで寒さをしのいだという。そんな冬のあいだの手仕事がいつしか文化となったのが、この刺し子。昔の暮らしには、こうしたローハスな物語がつきものだと実感した。

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この日、刺し子を見せてくれたのは池田純子さん。
「刺し子にもいろいろあるんですが、飛騨の刺し子はこうやって波縫いのように刺していくんですよ」。
笑顔でそう話す池田さんの手元を見ると、いつの間にか針は端まですすんでいた。今では、補強というよりデザイン性が強くなっている刺し子だが、風呂敷に刺してある菊花文の模様などは、きっちり物を包んで結び目がゆるまないよう滑り止めの役割も果たしているのだとか。必要なものは美しい。これぞまさしく「用の美」だ。
この日、見せてもらった刺し子小物の中で一番気に入ったのは、麻の葉、七宝(しっぽう)、青海波(せいがいは)などの古典柄がほどこされた「花ふきん」。さり気ない可愛らしさに、ついキッチンのお供にしたくなった。

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本舗 飛騨さしこ
所在地/岐阜県高山市片原町60
電話/0577-34-5345
http://www.hidanet.ne.jp/~sashiko/

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今では見かけることも少なくなった針道具。骨董屋さんを巡っていれば、いつか出会える日がくるかもしれない。また、針仕事のお供には、手にしっくり馴染むにぎり鋏も重要。
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「もったいないから、なるべく糸を切らないように、一筆書きのように針を刺していくんですよ」と池田さん。最後は、玉結びをせず二重刺しで始末をするので、裏面も美しい。
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座布団のような和の小物にこそ、刺し子の美しさが映える。使われる刺し子糸はオリジナルの木綿糸で、6本の糸を太めに甘よりにしている。草木染のものもある。
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こちらも昔懐かしい、お手玉。子どもの頃に遊んだ記憶がふっと蘇る。紺、青、赤、からし、緑の5色があり、1個315円。出産祝いなどに贈るのもいいかもしれない。





第二章
伝統を受け継ぐ
老舗旅館、
「八ツ三館」

創業安政年間150年の歴史ある旅館で堪能する
飛騨のおもてなし料理と湯浴み。
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 そろそろ日も暮れはじめたところで宿へ移動。今夜の宿は、高山から車で20分ほど行った飛騨古川にある料亭旅館「八ツ三館(やつさんかん)」。
荒城川沿いに立つこの旅館は、創業安政年間150年。建物の一部は明治38年再建の商家造りという歴史ある旅館で、茶の湯や能、雅楽などの伝統文化の伝承に努めているという。

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   今回この宿を選んだ一番の目的は、江戸時代から飛騨のおもてなし料理として受け継がれる「宗和流本膳くずし」。この地に生まれた伝統料理をこの地で味わう、スローフードの極意そのものの料理なのだ。早速いただいてみると、まず最初に運ばれてきたのはお菓子とお茶。それから、一の膳、二の膳、三の膳と続く。
八代目若主人の池田抄太郎さんによると、この「宗和流本膳」は、室町時代に公家武家の饗応料理として確立した「本膳料理」と、飛騨を治めた金森一族を始祖とする「宗和流茶道」が融和した料理。見た目にも豪華な饗応料理に、茶道のおもてなしの精神が加わったものだ。
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実際、最初にお菓子とお茶をいただくことで不思議とふっと心が落ち着いて、その後の一品一品の味わいが増してくる気がした。なかでも「生盛膾(いけもりなます)」は珍しい味わいで、新鮮な海の幸を容易に口にできなかった江戸時代に、刺身に見立てて作られたのがはじまりの料理。白和えのようなヘルシーさと食感は、ちょっと生々しいネーミングとはほど遠く、むしろ女性好みの味。古川のスローフードとして、是非試してほしい一品だ。

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 お腹もふくれて、旅館の近くにある3軒の造り酒屋の銘酒も含めた「利き酒セット」も楽しんだ後は、酒樽に酒粕を入れた天然温泉「どぶろく風呂」に。
その他、八ツ三館では地酒ゼリーも楽しめるそうだ。明日の朝には、古川のお米に地元の漬物「くもじ」、それに香ばしい朴葉味噌、美濃白鳥の川マスの一夜干しなど、地産地消を目指した朝食が出るというし、女性にうれしいもてなしはまだまだ尽きない。
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料亭旅館 八ツ三館
所在地/岐阜県飛騨市古川町向町1-8-27
電話/0577-73-2121
http://www.823kan.com

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古来より生薬・香料として用いられてきた丁子(ちょうじ)の蕾を煎じて染めた足袋が、部屋にさり気なく置かれていた。旅の思い出に持ち帰りたくなる。
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木の小箱を開けるとソーイングセット。こんなあたたかさが女性の心を和ませてくれる。「お風呂の際にお使いください」との添え書きとともに置かれている手提げもうれしい。
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客室は全部で25室。そのうち7室がある「招月」は、明治の面影を残した建物だ。お風呂は、天然温泉庭園露天風呂のある「せせらぎの湯」と、貸し切りも可能な「おしどりの湯」。





第三章
ヘルシーなスローフード、
精進料理「角正」

野菜のおいしさが伝わる飛騨の精進料理は、
ゆっくりと時間をかけて味わいたい、真のスローフード。
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 朝を迎えて表に出れば、あたり一面の雪景色。夜の間にまた降ったのだろうか。外は、足跡のない真っ白な雪で覆われていた。
高山に戻って車を降り、町なみを散策。静かに降り続く雪のせいか、町全体がしっとりとした趣につつまれている。この辺りは、春と秋に行われる「高山祭り」の時期は大変な賑わいぶりになるというが、旅に訪れるなら、このくらい人影がまばらなほうがちょうどいい。
新鮮な野菜や自家製の漬物が並ぶ朝市を見て回ったり、お土産やさんをのぞいたり。この町はそぞろ歩きがよく似合う。
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 さて、そろそろお昼の時間。旅の最後に立ち寄ろうと決めていたのが、飛騨に伝わるもう一つのスローフード、精進料理を出す「角正(かくしょう)」。
江戸末期創業という伝統あるこの店で出迎えてくれたのは、京都の「瓢亭(ひょうてい)」で修業を積んだ11代目の角竹正至さんだ。
高山の精進料理について角竹さんは、「もともとこの地にはおいしい高冷地野菜がありました。流通が発達していなかった時代に、わざわざ無理して魚介類を食べさせるのでなく、高山の野菜をおいしく食べさせる方法を、と考えられたのがこの料理です」と教えてくれた。
お寺の精進料理と違い、高山の精進料理は、野菜や穀物で肉や魚に似せる、いわゆる「もどき料理」にはしない。あくまで野菜のおいしさを伝えることに終始したものなのだ。
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料理が母屋から離れへとしずしずと運ばれてきた。ゆっくりと時間をかけて味わうこの精進料理には、ガラス越しに見える市の指定文化財の庭園が、春なら花、冬なら雪、と景観の華を添える。
この日の「八寸」に盛られていたのは、「赤かぶの千枚漬けのお寿司」「みだらし小芋」「桜麩」「ごぼうのごま和え」「雷こんにゃく」「きんかん」「生麩のしぐれ煮」。
この地方の伝統野菜である赤かぶのしゃきっとした食感に、さっぱりした風味を閉じ込めたお寿司は、とても上品な味わい。また、これらの料理には、高山に昔からある「えごま」や味噌などが程よく使われている。野菜だけのヘルシーな料理なのに、物足りなさがまったくないのはそのためだ。
高山のスローフードを堪能して、角正を出る頃には、またはらはらと雪が降りはじめていた。飛騨で味わうローハスな旅は、雪ではじまり、雪で終わりを告げた。
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精進料理 角正
所在地/岐阜県高山市馬場町2-97
電話/0577-32-0174
http://www.kakusyo.com/


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飛騨高山を訪れる人は、古い町なみの中のこんな日常の風景に魅せられるのだろうか。近くには、観光スポットの「高山陣屋」、毎朝6時から12時まで開かれる宮川朝市もある。
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日中も寒さが身にしみる。雪かきをする光景があちこちで見られたが、「東京から来たの? 今日は一段と寒い日だわねぇ」とおばあちゃんから声をかけられた。
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高山の名物料理は何かと聞けば、「中華そばか、みたらし団子」との答え。確かに、町を歩けばこの2つの看板があちこちにある。じゃあ、両方食べるしかないだろう。
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こちらも高山の名物料理、中華そば。江戸の醤油文化の流れを汲んでいるだけあって高山では醤油が濃く辛い味が好まれるが、その中でも「半兵衛」の中華そばは、ダシの風味がしっかり舌に残って本当においしい。高山陣屋のすぐそばにあるので、散策の合間にどうぞ。

味処 半兵衛
所在地/岐阜県高山市川原町54
電話/0577-34-8451



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17 February, 2006 |

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