フードコーディネーターとして活躍しながら、カフェ「coya」、雑貨店「oku」のオーナーでもあった、根本きこさんが沖縄で生活をはじめたのは、東日本大震災後の2011年春のこと。

移住先に選んだのは、那覇から車で3時間かかる山原(やんばる)の森。やんばるとは「山が連なって、森林が広がる地域」という意味で、沖縄県北部を指している言葉。ここでしか出会えない生物も多く、東洋のガラパゴスとも呼ばれています。

手作りと手探りの暮らし

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『根本きこの 島ぐらし 島りょうり』(祥伝社)は、きこさん一家の5年間の暮らしぶりが存分に詰まった、移住して初のエッセイ本。買い物さえも頻繁に行けないというジャングルの中で育まれる、日々の生活や食卓の風景が、魅力たっぷりに綴られています。

「冷凍庫に欠かさずストックしているのは、パインやドラゴンフルーツ、島バナナをカットしたもの」

「野草を摘んで作った酵素や自家製ヨーグルトで作るラッシー、シークワーサーの絞り汁とアガペシロップとフレッシュミントで作るジュース。(略) 田舎暮らしだと買い物に早々行けないので、日々が少しでもうるおうよう工夫する。むしろ、そんなあれこれがいちばんたのしいのかもしれない」

(「根本きこの 島ぐらし 島りょうり」96ページより引用)

本書で紹介されているトロピカルなレシピはどれも真似したいものばかり。

ときには、戸惑いや心細さを感じるジャングル生活でも、地元の食材を口に運ぶことによって、少しずつ島にチューニングすることができたのだと言います。

くよくよしていられない。そんなパワーをもらえる一冊

また、醤油や本を選ぶように、教育も好きなものを選びとりたいというきこさん。子どもは牧場に通い、馬のブラッシングや干草運び、馬糞とりの手伝いを行います。そんな動物たちとの”言葉を交わさないコミュニケーション”は、都会ではなかなか得がたいもの。

田植えをし、家を建て、そして第三子の妊娠から出産まで。この5年間の島での暮らしについて、「家族とは、こうしてゆるやかな波に、どんぶらこと船をこぎながら進んでいくようだ。ほんとうに興味深くて、胸の芯がぎゅっとしびれる思いだ」と語っています。

なにをどうやって選んでいいのか、悩むことの多い人生。ちょっと弱気になってしまったら、ページをめくってみてください。やんばるの森ときこさん一家に、きっとパワーをもらえるはず。

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